U_Origin(未)

私に教育以下の物は不要であった。

そもそも一や二といった真実であっても、私ではないどこかで数えてしまうような感覚を溶液の一つを初めて認識したときから幾つも持っていた。

故に私が産み落とされ、一滴一滴の成長を初めて足の重みで感じたときも、最初の言葉は声ではなく、唄ではなく、他の私以外には許されない謳なのであった。

何時という日もなく、他の誰とも徒会うことなく、全ての声を聞き、あらゆる願いを聞き叶えた。

ある日、東の時間より強い叫びがやって来、多くの緑を失おうとした。私が叫びを傾けてから塔の周りを迂回させてやると、幾向こうからたくさんの皆が集まって来、私に寄り添ってくれた。

大きな余裕だった。

私は彼ら、彼女らの泳ぎ、空馳せ、地澄む言葉を私の上で一つに紡いだ。

大きな緑を雲に抉られ、園庭の端に皆集まりながら塔と木漏れ日の日々を過ごした。

時折、死の虚ろが雲の向こうからすることもあった。一時期悲鳴のような集を響かせていたそれもいつのまにか閑に変わり、再び聞こえるのは私達の無音ばかりになった。

長いまどろみ。

 

その雲はとても分厚い。

ある日私は、私達を閉じ込めたその雲の果てを覗こうと、塔の梢まで登った。

パラメノの葉を漕ぎ、いくつか空を掴みつつ私はようやくその先まで辿り着くことが出来た。

雲に果てはなかった。

どこまでも空に沈んだそれが私達をここにいさせる。

地上、塔の周りの大地だけ雲海に取り残された孤島のようにその波頭の侵入を妨げ、私達の暮らす庭となっている。上手く話し合ってやっとのこした土の大地。それを雲の小高い壁が取り囲み、表に様々な模様を彩っている。

 

【共幅葉塔(枝弦葉樹)Meo】

同位波 U波

認識言語帯 D波 V波 Vx波 H波相

可聴周波数帯 ~600000Hz(導体H波)

可変換周波数帯 ~測定不可(D、H波他)

可影響圏 塔の頂上を中心とした直径約1000㎞の球

詩魔法使用不可 他サーバとの連携無

死の雲海に対する相殺範囲 半径50㎞の大地

不特定多数の定常H波によるマルチタスクプロセッサ

異相間のU波による仲介を目的として移植

移植者 不明

顕現子【メオ】オリジン